「ただいま」
誰もいない部屋のドアを開ける。
シーンと静まり返った空間に、自分の足音だけが響く…。
一人暮らしをしていると、ふとそんな瞬間に、きゅっと胸が寂しくなること、ありませんか?
もし、そのドアを開けた先に、愛しい「もふもふ」が待っていてくれたら。
「おかえりにゃん!」とでも言うように、短い足で駆け寄ってきて、あなたの足にスリスリと体を寄せ、ゴロゴロと幸せそうな音を奏でてくれたら…。
想像するだけで、心がじんわりと温かくなるような、猫との暮らし。
「でも、一人暮らしで猫を飼うなんて、ハードルが高いんじゃない?」
「仕事で昼間は家にいないし、お世話、ちゃんとできるかな…」
そんな風に、憧れと不安の間で揺れ動いているあなたへ。
大丈夫です。その不安、とてもよく分かります。
この記事では、一人暮らしで猫と暮らすことのリアルな良いこと、そして乗り越えるべき課題と、そのための具体的な工夫について、猫を愛してやまない私が、心を込めてお伝えします。
この記事を読み終える頃には、きっとあなたも「猫との最高のニャン生(猫生)」への一歩を踏み出したくなっているはずです。
猫との暮らしがもたらす、かけがえのない宝物
まず、猫との暮らしがどれほど素晴らしいものか、少しだけ自慢させてください。
圧倒的な癒やし効果
仕事で疲れて帰ってきた夜。もう何もしたくない…とソファに沈み込むあなたの隣に、そっとやってきて寄り添う小さな温もり。
ゴロゴロ…ゴロゴロ…
まるで「今日も一日、お疲れ様」と言ってくれているかのような、あの魔法のエンジン音。この瞬間のために、明日も頑張れる。心からそう思えるほどの圧倒的な癒やしを、猫は与えてくれます。
科学的にも、猫と触れ合うことで「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌され、ストレスが和らぐと言われています。難しいことは抜きにしても、ただそこにいてくれるだけで、ささくれだった心がまぁるく満たされていくのを感じられるはずです。
笑いと驚きに満ちた毎日
猫は、最高のコメディアンでもあります。
• なぜか全力で拒否していたはずの新しいベッドで、翌日にはヘソ天で爆睡している姿。
• どんなに高級なおもちゃより、段ボールに夢中になる姿。
• 部屋の隅で、何もない空間を相手に「シャーッ!」と一人プロレスを繰り広げる姿。
彼らの予測不能な行動は、単調になりがちな毎日に、彩り豊かな笑いと驚きを運んできてくれます。「うちの子、天才かも?」なんて、親バカになってしまうのもご愛嬌です。
ゆるやかな繋がりと責任感
朝、顔の横で「ニャーン(ごはん!)」と鳴いて起こしてくれる。夜、あなたがベッドに入ると、そっとお腹の上に乗ってくる。
自分を必要としてくれる存在がいる。その子のために、ごはんを用意し、トイレを綺麗にし、健康を気遣う。この「誰かのために」というゆるやかな責任感は、日々の生活にハリと、確かな幸福感を与えてくれます。

一人暮らしだからこその課題と不安
もちろん、良いことばかりではありません。一人暮らしだからこそ、きちんと向き合い、乗り越えなければならない壁もあります。
お留守番の問題
一番の心配は、やはり「お留守番」ではないでしょうか。
日中、仕事で長時間家を空けるとき、「あの子、寂しくないかな」「何か危ないことをしていないかな」と、気になってしまうかもしれません。猫は単独行動を好むと言われますが、ずっと一匹でいるのは、やはり退屈なものです。
緊急時の対応
もし、あなたがインフルエンザで寝込んでしまったら? 猫のごはんやトイレのお世話はどうしますか?
逆に、猫が急にぐったりしてしまったとき、深夜や休日に、一人で冷静に病院へ連れて行けるでしょうか。頼れる人が近くにいない場合、これは深刻な問題です。
金銭的な負担
フードや猫砂といった日々の消耗品から、ワクチンや健康診断、そして万が一の病気やケガの治療費まで。猫と暮らすには、当然ながらお金がかかります。これらすべてを、一人で計画的に賄っていく必要があります。
長期の外出や住居の制限
旅行や帰省で数日家を空けるとき、どうしますか?ペットホテルやペットシッター、頼れる友人はいますか?
また、引っ越しを考えたときも、「ペット可」という条件は必須になります。物件の選択肢が狭まったり、家賃が少し高くなったりすることもあるでしょう。

工夫次第で乗り越えられる!一人暮らしの猫との暮らし方
でも、安心してください。これらの課題は、あなたのちょっとした工夫と事前の準備で、十分に乗り越えることができます。
【対策1】お留守番を快適にする環境づくり
- 徹底した安全対策:誤飲してしまいそうな小さなもの(輪ゴム、薬、アクセサリーなど)は、猫の手が届かない場所に必ずしまう。電気コードはかじり防止のカバーをつける。入ってほしくないキッチンなどには、ゲートを設置するのも有効です。
- 退屈させない工夫:一人でも遊べる電動おもちゃや知育トイを用意する。窓の外を眺められるようにキャットタワーを設置すれば、最高の暇つぶしになります。
- 見守りカメラの活用:今や、一人暮らしの飼い主さんの強い味方です。外出先からスマホで愛猫の様子をチェックできるだけで、安心感が全く違います。声をかけたり、おやつをあげたりできる高機能なものも人気です。
のりまき猫体験談:
猫はしつけができません。して欲しくないことをするときは、物理的にできないような工夫をします。例えば、キッチンに上って欲しくない時は、上れないように柵を付ける。それができない時は、上っても危険がないように、常に片付けておくなど、猫に合わせることが必要です。
【対策2】万が一に備える「お守り」
- かかりつけ医と救急病院のリストアップ:近所の動物病院はもちろん、夜間や休日に対応してくれる救急病院の連絡先を、必ずスマホや冷蔵庫など分かりやすい場所に控えておきましょう。
- 頼れるサポーター探し:万が一の時に「うちの子をよろしく!」とお願いできる友人や家族、あるいは信頼できるペットシッターさんを見つけておくと、心の負担がぐっと軽くなります。
- ペット保険への加入:猫の医療費は高額になりがちです。突然の大きな出費に慌てないためにも、ペット保険への加入は、愛猫とあなた自身を守る「お守り」としておすすめします。
のりまき猫体験談:
私も一人暮らしで13年間猫を飼っていました。その子が高齢になった時には、持病を持っていたこともあり、何度も夜中に夜間対応の動物病院へ車を走らせたことも。いざ、猫の体調が急変すると焦るし頭は真っ白になるし、ネットで病院の住所を検索することもままならなくなります。あらかじめ車のナビに動物病院の住所を登録しておくなど、日ごろからの備えが大切です。
【対策3】猫選びも大切なポイント
もし、これから猫を迎えるなら、「どんな子を選ぶか」も重要です。
一人暮らしの方には、比較的性格が落ち着いていて、お留守番にも慣れやすい成猫を迎える、という選択肢もぜひ考えてみてください。保護猫カフェなどでは、スタッフさんがその子の性格をよく把握しているので、「一人暮らしでも飼いやすい子」を相談してみるのも良いでしょう。運命の出会いが、きっと待っていますよ。
また、思い切って、兄弟猫を2匹一緒に飼い始めるのも一つ。猫同士で仲良く遊んでくれますよ。後から2匹目を迎えるときは、また注意が必要です。そのお話はまた後日。
のりまき猫体験談:
保護猫を迎える場合、団体によっては里親の条件が厳しいこともあります。しかし、条件さえ合えば、猫をお迎えするためのトライアル期間を設けるなど、家族となる準備ができるのが良いところ。保護猫活動をしている私からは、保護猫を迎えるという選択肢もオススメします!

忘れないで。猫を飼うということ、その「覚悟」
ここまで、一人暮らしで猫を飼うための具体的な話をしてきましたが、最後に、とても大切なことをお伝えさせてください。
これは、一人暮らしでも、家族と暮らしていても、絶対に変わらないことです。
それは、一つの「命」を、その生涯にわたって預かるという、重くて尊い覚悟です。
猫の寿命は、今や15年、20年が当たり前の時代です。
あなたがこれから迎える子猫は、あなたが30代なら40代後半まで、40代なら還暦を過ぎるまで、ずっと一緒の時間を過ごす「家族」になります。
あなたの人生には、これから結婚、出産、転勤、転職など、さまざまな変化が訪れるかもしれません。その時、環境が変わっても、この子を生涯手放さずに、愛し続ける覚悟はありますか?
爪とぎで壁がボロボロになるかもしれません。粗相をしてしまうこともあるでしょう。歳をとれば、介護が必要になる日も必ず来ます。そして、いつか必ずやってくる、お別れの時まで。
そのすべてを受け入れ、最後まで愛情を注ぎ、看取る覚悟が、あなたにはありますか?
それでも、猫との暮らしは、やっぱり最高!
たくさんの課題や覚悟についてお話ししたので、少し不安にさせてしまったかもしれません。
でも、これだけは断言できます。
大変なことも全部ひっくるめて、猫との暮らしは、間違いなく最高です!
あなたが注いだ愛情は、決して一方通行ではありません。猫は、その何倍もの温かさ、癒やし、そして生きる喜びを、あなたに返してくれます。
ドアを開けた瞬間に「おかえりニャー」と駆け寄ってくる姿。
あなたの膝の上で、安心しきって眠る無防備な顔。
ふとした瞬間に目が合って、ゆっくりと瞬きをしてくれる「大好き」のサイン。
そんな、何にも代えがたい宝物のような瞬間が、あなたを待っています。
あなただけの「ただいま」に応えてくれる存在がいる幸せを、ぜひその手で、その心で、確かめてみてください。
さあ、準備はいいですか?
あなたと未来の愛猫との、かけがえのない物語が、今、始まろうとしています。
筆者プロフィール|のりまき猫
猫との暮らし歴20年。現在は保護猫の預かりボランティアとして活動中です。
今までに9匹の保護猫を預かり、新しい里親さんとのご縁を繋げてきました。
自身の経験から、猫を「飼う前」も「飼った後」も知っておくべきリアルな話をお届けしています。
コメント