こんにちは
保護猫ボランティアとして、今までに9匹の個性豊かな猫たちを自宅で預かり、新しい家族の元へ送り出してきました、のりまき猫です。
ところで皆さん、今、日本にペットとして飼われている猫は何匹くらいいるかご存知ですか?
最新の調査(※)によると、その数なんと約906万9千頭! 新たに飼われる数も犬を上回っていて、まさに空前の猫ブームですよね。
(※一般社団法人ペットフード協会 2023年全国犬猫飼育実態調査より)
このブログでは、そんな身近な存在である猫との暮らしを考えたときの選択肢のひとつとして、「保護猫ボランティア」という関わり方をお伝えしていきたいと思います。
「ボランティアって、なんだか大変そう…」
「猫を飼うなら、ペットショップじゃないの?」
そう思っている方にこそ、ぜひ読んでいただきたいお話です。
本日は、まず「保護猫」と、彼らを支える「保護猫団体」についてお話ししますね。
「保護猫」とは?
「保護猫」とは、様々な理由で飼い主がいなくなってしまい、保護された猫たちのことを指します。
決して「誰かに一度捨てられた、可哀想な猫」というだけではありません。一匹一匹に、人間と同じように個性があり、背景には様々な物語があります。
では、なぜ保護猫が生まれてしまうのでしょうか。その背景は一つではありません。
- 飼い主さんの事情:飼い主さんが高齢になったり、病気やアレルギー、お引っ越しなどで、どうしても飼い続けることができなくなってしまうケース。
- 多頭飼育崩壊:不妊去勢手術をしないまま猫が増え、飼い主さんの手に負えなくなること。ここで一つ、驚くようなお話を。猫は繁殖力が非常に強く、1組のつがいが1年後には理論上20匹以上、3年後にはなんと2000匹以上に増える可能性があると言われているんです。びっくりですよね。だからこそ、不妊去勢手術がとても重要になります。
- 繁殖リタイア:猫を繁殖させて販売するブリーダーのもとで、繁殖の役目を終え、不要になってしまった猫たちです。
- 迷子:お家の窓やドアの隙間から脱走してしまい、お家に帰れなくなってしまう子もいます。
- 野良猫から生まれた子猫:お外で暮らすお母さん猫から生まれた子猫たちが、危険な状況で保護されることもあります。
どんな理由であれ、彼らはみんな、もう一度安心して眠れる場所と、優しい家族を待っている、愛されるべき存在なのです。

猫たちを救う「保護猫団体」~その光と課題~
さて、そんな行き場のない猫たちを救うために活動しているのが、「保護猫団体」です。
ここでは、団体が生まれた背景と、その活動が持つ「光」の部分、そして私たちが知っておくべき「課題」について、少し踏み込んでお話しします。
なぜ「保護猫団体」が生まれたの?
昔は、飼い主のいない猫の行き先といえば、その多くが行政施設(保健所など)でした。そして、残念ながらそこでは一定期間内に新しい飼い主が見つからなければ「殺処分」となるのが現実でした。
しかし、ここで希望の持てる数字があります。
猫の殺処分数は、この10年あまりで劇的に減少しているのです。環境省の統計によると、ピークだった平成16年度には約23万7千頭もの猫が処分されていましたが、令和4年度には約1万1千頭にまで減少しました。
これは、「助かるはずの命を、一つでも多く救いたい」という強い思いで活動を始めた保護団体と、動物愛護への意識が高まった市民の皆さんの努力の賜物です。
処分されるためではなく、新しい家族と出会うための場所を作る、という流れが確実にできあがってきた証拠と言えます。
保護猫団体の素晴らしい活動(光の部分)
- 命を未来へ繋ぐ:年間1万頭以上もの命が失われている現実はまだありますが、それでも数十万の命が救われるようになったのは、間違いなく団体の活動のおかげです。
- 安心の医療体制:多くの団体では、保護した猫に必ず健康診断、ワクチン、不妊去勢手術などを施してから譲渡します。猫自身の健康はもちろん、新しい家族が安心して迎えられるための、とても大切なプロセスです。
- 最高のマッチング:ボランティアは猫一匹一匹の性格や個性をじっくりと把握しています。「甘えん坊な子」「少し臆病な子」「他の猫と仲良くできる子」…。希望者の家庭環境やライフスタイルを聞き、最高の相性の子を紹介してくれるので、ミスマッチが起こりにくいのです。
活動の裏側にある現実(抱える課題)
しかし、その素晴らしい活動の裏側で、ほとんどの団体が大きな課題を抱えています。これは団体の「悪いところ」ではなく、社会全体で支える仕組みが追いついていないことの表れでもあります。
- 慢性的な人手不足と資金難
活動のほとんどは、少数のボランティアの善意と、皆さんからの寄付によって成り立っています。日々の食事代、高額になることもある医療費、施設の維持費など、資金は常にかつかつです。 - 後を絶たない安易な保護依頼
「庭に子猫がいるからすぐ引き取りに来て」「TNR(※)を全部やってほしい」といった、団体のキャパシティを考えない安易な相談や依頼が後を絶ちません。私たちは魔法使いではありません。保護できる数にも、動ける人間の数にも限りがあるのです。こうした依頼への対応が、本当に緊急性の高い猫たちを救う機会を奪ってしまうこともあります。 - 手放す人からの相談対応
「引っ越すから」「アレルギーが出たから」…様々な理由で猫を手放す人からの相談も、私たちの重要な活動ですが、精神的な負担は計り知れません。飼い主さんの苦悩に寄り添いながらも、時に無責任さに心を痛めることも。猫を手放さずに済む方法はないか一緒に考えますが、それでも別れが避けられない時の無力感は、言葉になりません。 - ボランティアの疲弊
日々の業務に加え、こうした精神的なプレッシャーは、ボランティアの心をすり減らします。「命を預かる」という重圧の中で燃え尽きてしまう(バーンアウト)人も少なくないのが現実です。 - 譲渡条件の壁
「譲渡の条件が厳しすぎる」という声を聞くことがあります。
これは、「二度とこの子に辛い思いをさせたくない」という団体の強い思いの表れです。時にそれが、猫と新しい家族との出会いを阻む壁になってしまうことがあるのも、また事実です。
※TNR…Trap/捕獲し、Neuter/不妊去勢手術を行い、Return/元の場所に戻す活動。望まれない子猫を減らし、一代限りの命を地域で見守る方法
これらの課題は、保護活動の現実です。だからこそ、一人の力だけでなく、多くの人の様々な形でのサポートが必要不可欠なのです。

次回予告
さて、第1回は数字も交えながら、「保護猫」と「保護猫団体」のリアルな姿をお届けしました。
少し、身近に感じていただけたでしょうか?
「猫たちのために、何かしたいな…」
「でも、私にできることなんてあるのかな?」
そう感じてくださったあなたへ。
次回は、「私にもできること!多様な保護猫ボランティア活動」と題して、具体的なボランティアの種類についてお話しします。
実は、猫を直接お世話する以外にも、本当にたくさんの関わり方があるんですよ。
それでは、また次回!
筆者プロフィール|のりまき猫
猫との暮らし歴20年。現在は保護猫の預かりボランティアとして活動中です。
今までに9匹の保護猫を預かり、新しい里親さんとのご縁を繋げてきました。
自身の経験から、猫を「飼う前」も「飼った後」も知っておくべきリアルな話をお届けしています。
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